今日も引き続き『ミステリーの書き方』(幻冬舎文庫)より、プロ作家のアドバイスをご紹介します。
今回は三毛猫ホームズシリーズなどで一世風靡した、
赤川次郎さん。
公募新人賞の選考委員をやってみて思ったのですが、小説として面白いものがとても少ない。読んでて疲れちゃうんです。自分が書いているものに対する愛着があるんだろうかと疑問に思います。
登場人物を愛さないといいものは書けないと思うのですが、そういう愛着が感じられない。技術的にたいしたことがなくても、登場人物が生き生きと書けているほうがいい。主人公が印象に残らない小説はダメですね。
本当におっしゃる通りだと思います。
登場人物に限らず、自分の選んだテーマにしろ、ネタにしろ、強烈な思い入れを持って書いた人の文章は、たとえ技術的には未熟でも、心打たれ、深く印象に残るものです。
プロの書いた上手い文章はサラッと読めてもほとんど心に残らないのに、田舎から送られてきたお袋の手紙は、たどたどしくても子を想う心情に溢れていて、思わず目頭が熱くなったり。
私も雑誌に原稿を書く上で、もちろん文章テクニックは一所懸命に磨いてきましたが、テクニックだけで人の心は動かせないことを日々実感しています。
テクニックを言う前に、自分の書くものにどれだけ深い思い入れがあるか。
それからもう一つ、貴重な時間を割いて読んでくださる方に、どれほどの価値を提供できるかという視点も大切だと思います。
役に立った、気づきを得た、面白かった、感動した。
自分の文章を通じて提供できるものは、いろいろあると思います。
究極は、過去記事「火事場の馬鹿力をいつも発揮して執筆する方法」にも記しましたが、読んでくださる方の幸せを願いながら書くことでしょうね。
どうせ書くなら、たとえささやかであっても、読んでくださる方に何かを与えられるものを書きたいものです。
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