週末に、ドラマ『それからの武蔵』をまとめて観ました。
少し前にBSで再放送されていたのを録画しておいたのですが、よい気分転換になりました。
それにしても、主演の萬屋錦之介は、まるで武蔵の霊が憑依したかと思うくらいに見事なハマリ役でしたね!
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『それからの武蔵』は、あの吉川英治先生の不朽の名作『宮本武蔵』の続編ともいえる物語ですが、原作者は吉川先生ではありません。
吉川英治先生の『宮本武蔵』は、野獣のような荒くれ者だった青年・武蔵(たけぞう)が、剣を通じて人間として成長し、最後に巌流島で天才・佐々木小次郎と雌雄を決するまでの物語です。
新聞連載当時の人気は凄まじく、話の続きが待ちきれずに、新聞が来るのをいまか、いまかと家の外まで出て待ち構える人も多数。新聞の発行部数が、この連載小説によって激増したとまでいわれています。
私自身にとってもこの『宮本武蔵』は、辛い時期に自分を支えてくれたバイブルともいえる作品であり、不遇の生い立ちからこの名作を生み出し、国民作家と仰がれるまでの大家となられた吉川英治先生のことを、私はもの書きの端くれとしてずっと心の師と仰いできました。
これに対して『それからの武蔵』は、小山勝清という作家の作品で、吉川先生が描かなかった巌流島の決闘以降、武蔵はいったいどういう人生を歩んでいったかが描かれています。
だから「それからの」武蔵というタイトルになったわけですね。
『それからの武蔵』と銘打って書くからには、どうしたってあの『宮本武蔵』を意識させてしまいます。あの名作の続きとして、読む人を納得させるだけのクオリティがなければ、たちまち酷評の対象となってしまうでしょうから、おそらく小山勝清さんは大変な覚悟をもってこの作品に臨まれたのではないでしょうか。
同時に、あの偉大な名作を超えてやろうという、並々ならぬ意欲もあったことでしょう。
ドラマを見た私の印象では、巌流島の後の、それからの武蔵の物語として、十分納得でき、楽しませてもらえる作品でした。
小山さんの力量に感服させられました。
小説を書こうという時、最初にアイデアをひねり出すプロセスは最も楽しい部分であると同時に、とても大変な作業でもあります。
これまでにないまったく新しい物語というのは、そう次から次へと簡単に生み出せるものではありません。
ですから、小説のアイデアを考える時には、すでにある有名な作品の続編に挑戦する、あるいは自分の好きな作品をモチーフにして考えるというのも、1つの有効な手段だと思います。
もちろん、それはそれで大変な力量を要することではありますが。
それでも、過去の有名な作品の中にはそれを見事にやり遂げたものがたくさんあります。
小山勝清さんの『それからの武蔵』は、まさにその成功例といえるでしょうね。
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