人間が人間らしく生きるために書く

いま、手元にある本をパラパラとめくっていて、森村誠一さんのこんな文章が目に留まりました。

文芸は生存にとって必要ない。だが、文芸以下すべての芸術、創作は、人間が人間らしく生きるために必須である。私の少年時代、太平洋戦争最中、国民が食うや食わずの生活を強いられているとき、文庫二百冊が配給(有料であるが、販売ではない)される書店の前に、長蛇の列が並んだことをおぼえている。その作品も、本人が選べるのではなく、おかみのお仕着せであった。まさに人はパンのみによって生きるにあらずを実感した。(『ミステリーの書き方』/幻冬舎文庫)

私ごときがこんなことを書くのはおこがましいのですが、小説のアイデアを一所懸命練っている最中にふと、こんな作り事を書き綴って何の意味があるんだろう、と空しい思いに苛まれることがあります。

しかし森村さんのこの言葉に触れて、自分の浅はかさに気づかされました。

確かに、人間のそばには昔から常に物語があり、そしていまも新しい物語が生まれ続けています。やっぱり人間には物語というものが必要なのでしょう。

私自身も物語によって、どれほど心に潤いや生きる糧を与えられてきたことか。

うん、やっぱり人間にとって物語は必要だ。

書いててむなしさを感じるのは、自分の書くもののレベルがまだまだ低いから。もっともっと力をつけて、読んでくださる人の心や魂を揺さぶるくらいのものを書けるようにならなければ。

森村さんの一文で、そんな原点に返ることができました。

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