川端康成原作の映画『伊豆の踊子』(吉永小百合版)を鑑賞

私の好きな作家の一人・川端康成先生は、とても美しい文章を書かれる方です。

あの有名な『雪国』冒頭の一文

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

もそうですが、読んでいると、その場の情景が立体的に立ち上がってくるんですね。

その場の空気感というか、気温、気配、匂い、明暗まで含んだ映像が、頭の中にリアルに立ち上がってくる。

とてつもない文章を書かれる方だなぁと、読む度に思わずため息が出ます。

先日、仕事で久しぶりに『伊豆の踊子』を再読する機会があったんですが、偶然にBSでも映画が放映されていたので、録画して鑑賞してみました。

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『伊豆の踊子』は、これまで3度映画化されていますが、今回放映されていたのは1963年公開の吉永小百合版

まだ十代の吉永さんはとても初々しく、旅の学生に淡い恋心を抱く踊り子を好演していました。

もちろん吉永さんは素敵なんですが、個人的には原作にない薄幸な娘役で登場する十朱幸代さんが好みかなぁ(笑)。

いまは亡き南田洋子さんも、実に色っぽい(笑)。

それから、踊り子の属する旅芸人一座のお母さん役。この女優さんどこかで見たことあるなと思ったら、私の好きな映画『宮本武蔵』(中村銀之助主演)で、武蔵をつけ狙うお杉婆さんを演じた浪花千栄子さんでした。

ストーリーは概ね原作に忠実なんですが、大きく違うのは、主人公の学生が現在は初老の大学教授となっており、若い頃の淡い思い出を振り返る形で物語が始まるところ

大学で教えているいまをモノクロ、伊豆に旅した過去をカラーで表現しているところが面白いと思いました。

旅先での踊り子との出会いは、この大学教授の心にいまなお鮮やかに残る美しい思い出なんでしょう。

同時に、現在がイキイキしたカラーではなく、モノクロで表現されている点から、この主人公はいまそんなに幸せを感じていないのではないか、といった想像をかき立てられます

伊豆に旅した当時、学生の身分である主人公と、旅芸人一座の踊り子との間には、現代では考えられないほど高い高い身分の障壁があったようで、互いに淡い恋心を抱きつつも、一線を越えることはできず、別れざるをえませんでした。

しかし、もしあの時、すべてを捨てて踊り子と一緒になっていたら、自分の人生はもっと輝くものになっていたかもしれない・・・

そんな後悔が伝わってくるような、モノクロ描写でした(笑)。

なんだか、少し前に見た『日の名残り』にも通ずるものを感じた次第です。

伊豆の山道や温泉街の風景もとても美しく、印象的な作品でした。

『伊豆の踊子』は、美空ひばりさん山口百恵さんも主演を務めているので、機会があれば観比べてみたいと思います。

◎満足度:☆☆☆★★

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